通称バネ指というのは大人の場合で、正式には先天性母指拘縮と呼ばれるもので、多くの場合には腱自体が原因になっています。
親指の一番先を曲げる長母指屈筋という筋があります。この筋が指先の骨を引っぱって、指が曲がったり伸びたりします。
そして、この筋の腱には押さえ(滑車と呼びます)があります。腱はこの滑車のなかを動くしくみになっています。
大人の場合は、この滑車の部分と腱とがこすれて、ひっかかるような感じでバネ指が起こります。
こどもの場合は、生まれつきこの腱の一部がだんご状に太くなって、こぶのようになっていることがあります。そのために、指が曲がった状態で、腱が滑車のなかを通ることができず、指が伸びないという状態になっています。そういうものを先天性母指拘縮と呼びます。
成長とともにこのこぶが吸収されてひっこめば、自然に治ることもあります。
手術ではこの滑車の一部を切りひらくということをします。滑車の一部分を切りひらけば、こぶがひっかかることはなくなるので、腱が滑車のなかを動くことができ、指も動くというわけです。
手術は40分ぐらいで終わり、入院も必要ではありません。傷も1センチ未満の大きさですし、出血するわけでも、神経などを切る危険があるわけでもありません。
部分麻酔というのは局所麻酔のことですが、今のこどもたちは9歳まで待たなくてもだいたい4歳ぐらいで局所麻酔で手術するのにおとなしくしていることができます。ですから、9歳まで待つことはないでしょう。
手術の時期をいちばん制限するのは、指の大きさです。使う手術の器械が同じだとすれば、手術の器械が入っていくためにはそれだけの大きさを切らなければなりませんね。相対的なもので、手の大きさが手術の時期を決めるものだと思っていいでしょう。4〜5歳になって、手の大きさが十分大きくなったところで局所麻酔でできます。ただし、手術には手遅れということはありませんので、あわててすることもありません。
治療の時期のいちばんの問題はこどもの心です。こどもが指のことをほかの子からいわれて気にするようだったら早く手術するほうがいいでしょう。
しかし、見せなければだれにもわかりませんから、そのまま大人になることもありえます。現に、大人になってもそのままの人もいます。両方の指が曲がったまま看護婦さんをしている人もいます。
伸びないだけで痛みもなんにもなくて、ほかの人は気がつかない。仕事には困らない。親指が伸びないというのは意外に困らないものです。職業を左右するものではありません。ですから、気にしなければ、そのままでもよいということです。
リハビリとして、伸びないものをしょっちゅう伸ばすことによって拘縮がとれることが30パーセントぐらいありますが、私はあまりおすすめしていません。
気になさる必要はないと思いますが、どうしても気になるのであれば手術を受けられるのがいいかと思われます。
(整形外科医/田渕健一)
ちいさい・おおきい・よわい・つよい』No.22
(1999年2月1日第一刷発行)
「それなら知ってる!Q&A」(P89〜90)より
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